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?…好き…?

第19章 産休…

『アタシ…冷たいから…』
俺が、どう思っていたって、彼女は、帰らねばならない。
そんなことは、分かっている。
俺は…
何をそんなに思い詰めているのだろう…
今日、彼女はこんなに長く、一緒に過ごしてくれていたじゃないか…
『アタシ…冷たいから…』
半ば微笑みながら、彼女は言っていた。
軽い気持ちで言っていたのは、容易に想像が出来る。
寧ろ、ある意味では、お互い帰らねばならない状況で、彼女は自分が冷たいからと、そう言って区切りをつけてくれたとも言える…
産休に入る直前の今日、俺と…
俺なんかと一緒に、買い物をしてくれていた…
早く帰るならば、駅で俺を降ろし、帰ることも出来る…
なのに、彼女はそれをしなかった…
わざわざコンビニに寄って、一緒にお喋りをしながら、アイスクリームを食べて、一服して…
十分すぎるほど、長時間過ごしたじゃないか…
けれど、何故だか
『アタシ…冷たいから…』
その言葉が、頭の中で、何度も繰り返された…
彼女のその微笑みが…
頭に焼き付いて…
消えない…
俺も、帰らなければならない…
分かっている…
でも、まだ彼女と離れたくなかった…
もしかしたら、いや、多分、赤ちゃんが産まれたら、もう…
『アタシって…冷たいから…』
とぼとぼと、歩いている俺の頭の中で…
彼女の言葉が…
彼女の呟きが…
繰り返し、繰り返し、響き渡る…
………
『アタシって…冷たいから…』
………
何度も、何度も…
………
『あ~…アタシって…冷たい…』
………
何度も…
何度も…
……………

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