無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

俺は、煙草を吸い終わった。
ほどなくして、彼女も煙草の火を消す。
携帯灰皿を差し出した。
「ありがと…、さて、それじゃ、そろそろ…」
何でもない顔をしたかったが、出来なかった…
彼女を、じっと見つめてしまっていた…
彼女は、俺の気持ちを、読み取っているかの様だった。
「ご飯作らなきゃいけないし…」
「あぁ…」
「アタシって…冷たいから…」
いつもの彼女と、少し違った。
細く、小さな声だった…
彼女は車に乗り込んだ。
既に暑い季節。
彼女の車は、今日のドライブ中、窓はずっと閉めたまま、冷房がつけられていた。
その運転席の窓を、彼女は開けた…
場所や時間にも寄るが、彼女と今の様な関係になってから、去り際に彼女が運転席の窓を開けると、俺は大抵ドアにもたれ、彼女の手を握ったりして、別れの挨拶をしていた…
だが…
俺は近付かなかった…
いや、近付けなかった、と言う方が正しいのかもしれない…
じっと彼女の顔を、見つめ続けていた…
「それじゃぁ…、あ～…アタシって…冷たい…」
車の脇で、俺はたたずんでいた…
前向きで駐車していた彼女の車は、ゆっくりとバックし始めた…
俺が居るのと反対側に下がって行く…
俺は、彼女の車の動きに合わせて、通りの歩道に向かって歩く…
もう、暗くなってきている…
車の正面から、フロントガラス越しに、彼女の顔が僅かに見えるのを、じっと見つめていた…
俺は、何気なく、下唇を噛んでいた…
ガラス越しに、彼女が手を振っているのが見えた…
何も考えず振り返した俺の手は、無意識に中指と薬指だけを下げていた…
I…Lo………？
彼女の車が、通りに出て走って行くまで、見続けていた…
車が去るのを、まさしく見送ってから、去った車と逆の方角へ歩き出す…