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ふしだらと言わないで

第5章 慰み者の娘 2

 スッ、パタン…
 誰かが入ってきた

 目を閉じた額に手が触れる
 温かい大きな手…

 私は顔を動かして目を開ける

 心臓が鳴る
 涙が出そうだった



「起きていたか」
「おじ様、どうして…」



 信じられなかった
 だってお仕事は…?
 日中は屋敷にいないことが多い
 それどころか毎日ほとんど夜遅くに帰宅する忙しい身だ



「少し抜けてきた」
「…ごめん、なさい…
体調管理ができてませんでした
ごめんなさい…」



 目に涙が浮かんできた



「頼れる人間もいる
大したことはない問題だ
それより双葉を案じるのが先だ」
「大丈夫です…
一日で治します…」
「お前はよく働いている
気にしなくていい、ゆっくり休め」



 優しい手が額を撫でる

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