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君のため。

第95章 ◇人工衛星◇

「メールを消す前に一つ聞かせて下さい。僕が去年、略奪をしてたら一緒になってましたか?」


…最後の最後にあなたっていう人はなんていう質問をしてくるんだろう?


でもこのメール、

…一緒に行くのは無理だったよ。

っていう答えを待ってたんだろうな。やっぱり無理だったんだ。なら仕方がないって。


実際無理だったと思う。でもそ
んなこと真っ直ぐ言いたくなくて。


「去年ならまだわからない。
けど、ずっと写メを拒んできた私が最後にいいよ、って撮らせたり、氷山?はそうやって少しずつ溶けていくものだから。
最後の「大丈夫よ」はかなり効いてましたよ(^_^)」


実際に最後の日に「大丈夫よ」と彼に言われたことで、
こんな後まで、一途な彼女さんに勝てないのわかっていて、
私はここまで彼を求めていたのだから。


でもたぶん、やっぱり一緒にはなれなかったな。
私だけなら、ついてもいけたけど。
彼のような人と幸せになるのは難しい。
幸せにしてもらうんじゃなく、
幸せにしてあげる自信はあったんだけど。


この恋が始まった時に思い浮かんだ本のタイトル。

『スプートニクの恋人』

近づくことはあっても決して重なることはない人工衛星同士のような恋。

…私は最初からそう、わかってたんだよ。

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