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君のため。

第85章 ◇勇気◇

彼とやりとりしていたメールアドレス。


元々、軟派な感じで声をかけられたので

いつでも終われるようにと

わざわざ作ったいわゆる捨てアド。

だから、捨ててしまえば良いのだ。

いっその事。


なのに、その勇気が出ない。


ほぼ彼とのやりとりのみの
そのメールボックスの容量はすでに90%使用している。


付き合っていた最後あたり、

もうすぐに容量一杯になっちゃうな。
始まりから全部の私達の記録。消したくないな。

無邪気に私はそう思っていた。


でも今は。

今こそ、全部、消さないといけない。

始まりから終わりまでの全部の記録を、

もう彼からのメールを二度と期待しなくてもいいようにアドレスごと捨ててしまわないと、って。


わかっている。

わかってはいるけど、

まだ勇気が出ない。

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