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変人を好きになりました

第25章 日時を定めて

「そんなに驚くことか? 何度も言っているが、僕はずっとその……古都のことが」

 そこで言葉を止めてしまった柊一さんの顔を穴が開きそうなくらい見つめる。
「古都しか見てなかった」
 そう言うとぷいと顔を横に向けてしまった。

「柊一さん」
「ん」
 素っ気ない返事。
「すごい嬉しいです」
「でも、古都は空良と付き合っていたな」
「それは……」 
 今度は突然不機嫌になる。今日の柊一さんはいつもより表情が豊かだ。

「こういうことも空良としたんだろ。空良が言っていた……古都の胸は大きいと」
「何それ!」
 空良くんの馬鹿。
 こちらを向いた柊一さんの眉は下がっていた。
「空良くんは私の胸を勝手に触っただけで、それ以上は何もないです」
「本当か」
「はい」
 答えた瞬間柊一さんが私をまた組み敷いている腕に力を入れた。

「あ」
 そして思い出したように声を漏らす。
「でも、胸は触られたんだな」
「……は、い」
「そうか。いや、胸の皮膚を触るのと手の皮膚を触るのとで何が違うんだ。同じじゃないか……。それなら、何故僕はこんなにも苛ついているんだろう」

 またも変なことに天才の頭脳を働かせようとしている。
 純粋すぎるとこうなるものなのかと半ば呆れ、そして愛しくなってしまう。
 普通の女性ならいざというときに自分を組みしいている男がこんなことを言いだすとげんなりしてしまうだろう。愛しいと感じてしまう私は変人になってしまったのかな。

「柊一さん、余計なこと考えないで下さい。考えなくていいことを考えると脳中の血糖値が低下して研究に集中できなくなるんじゃないですか?」
「考えなくていいことじゃない」
「考えても何も変わりません。今、私はここにいるんですよ。……私が柊一さんに余計なことを考えてほしくないの」
 頬を膨らませると柊一さんの目が一瞬とろんとまどろんだ。

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