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変人を好きになりました

第25章 日時を定めて

「じっとしてて」
 耳元でやけに甘い囁き声して体を石のようにしていると右手の小指が微かに重くなった。
「ぴったりだ」
 枕をどけてもらって、自分の小指を上にかかげて見る。

「綺麗……」
 キラリと光る青色の宝石がついた指輪が小指にぴったりとはまっていた。
 驚いて黒滝さんを見る。

「気に入ったか?」
「すごく。でも、どうして……」
 体を起こすと、ベッドの上に座るとベッドの脇に立っていた黒滝さんがすっと床にしゃがみこんだ。
 そしてまるでお姫様を起こしにきた王子様のように私の手をとって頬を寄せる。黒滝さんがそんなことをするなんて……しかも恐ろしいほど様になってて現実のできごとかどうか疑問が浮かんでくる。

「古都。僕の恋人になってほしい」
 今度こそ心臓がぎゅうっと握りつぶされるくらいの衝撃を受けた。
 でも、口にする答えは高校生だった黒滝さんと会った時から決めていた。

「喜んで」
 震える口元を押さえつけ頑張って答えた瞬間黒滝さんが私を抱きしめた。
「よかった……」
 緊張していたのか私の背中に回した手が少し震えている。でも私のほうがもっと震えていると思う。人って嬉しいとこんなに震えるもらしい。歯がかたかたと音をたてそうだ。

「柊一さん。好き」
 そう言うと黒滝さんの腕に一層力が入った。
「……古都、限界だ」
 低く呟くとそのままベッドの上で抱き合う。黒滝さんの切れ長の黒い瞳が私を捉える。どんどんその瞳が近づいてきて目をつむると唇が重なった。

「んっ……柊一さん」
「古都。僕も好きだ」
 何度も重ねられるキスの合間に絞るように口にする。
 黒滝さんは私の口ごと食べようとしているのではないかと思うほど執拗に唇を重ねる。

「しゅ、いちっさん……っ」
 酸素が足りないことを伝えたいのにそのわずかな暇さえ与えてくれない。
「古都……っ」

 今まで押さえつけていたものを全て解き放ったような激しいキスが降ってくる。頭がくらくらして意識を手放しそうになるのは酸素不足のせいというよりも黒滝さんと溶け合っている状態に酔っているせいだと思う。

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