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変人を好きになりました

第23章 共犯者の正体

「女が女を好きなんて古都には理解できないわ。友達としてでしょ? なんて聞くに決まってるし、私はそれに頷くしかできない。それならいっそ嫌われるほうがまっしよ。理解されないままあの子の近くにいるのはもう耐えれな……っ!?」

 由佳が気配に気づいたのかちらりと後ろに視線をやった。そこでばちりと音がするくらい視線がかち合った。
「あ」
 空良くんが渋い顔する。
「なんでここに」
「由佳……」

 私が由佳に近付くと、由佳はジーンズをはいた細長い脚を後ろに運ぶ。エプロンに隠れていない白いカッターシャツの襟元がすこしずれた。
「古都、聞いてたの?」
「うん。由佳、今のが本当の話なんだよね」
「……気持ち悪いよね」
「由佳、ごめんなさいっ」

 頭を下げると由佳も空良くんもたじろぐ様子が空気から伝わってきた。
「由佳の気持ちに気付けなかったのに、親友だなんて私、勝手に」
「ううん。気付かれないようにしてたのは私よ。古都は何にも悪くない」

 私は顔を上げると由佳を見た。
「私は……他に好きな人がいるの。だから、由佳の気持ちは嬉しいけど応えられない」
「うん」
 由佳は静かに笑った。
「でも由佳さえよかったら、これからでも友達になってくれる?」
 私はおずおずと由佳の前に手を差し出した。由佳は黙ってその手を見つめる。

 酷だったかもしれない。
 今まで好きだった人にこれから友達として傍にいてほしいなんて自分勝手なのかもしれない。
 自分勝手でも我儘でもいい。
 由佳が私の手を握った。

「今までだって友達だったじゃない」
 由佳が涙を流しなら笑っているから、私もつられたように笑った。
「ほんと?」
「本当よ。友達。勝手に私が狙ってただけなんだから。これからも友達よ。あとこれからだって狙い続けるんだから」
 由佳がよくする私をからかうような笑顔を見せた。

「狙い続けるのは勝手だが、古都さんは譲らない」
 後ろから黒滝さんがさっと現れた。腕を組んで本棚に背を預けている。
 様になって恰好いい。
「そんな風に傲慢だったらすぐに奪えそうね」
「じゃあ、俺も古都のこと諦めなーい」
 空良くんもふざけたように口にした。
 黒滝さんの目つきが鋭くなる。由佳も空良くんの方に視線を向けて挑むような顔をした。

 思わず私は笑い声を漏らした。

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