
変人を好きになりました
第18章 本当の故郷
「よくこんなになるまで放っておけるよね」
空良くんも呆れたように私の耳元で囁いた。クロタキさんは地獄耳なのか、その声に振り返るとふんと鼻を鳴らす。
怒っている様子でもないらしい。
「利便性を一番兼ね備えたのが今のこの部屋の状態なんだ。古都さん、僕の部屋はなにがあっても片付けないでほしい」
「は、はあ」
私は頷くしかなかった。病室に来るときは本当に小奇麗な格好でさらりと登場するクロタキさんがまさかこんな部屋に住んでいるなんて夢にも思わなかった、私の想像上のクロタキさんの部屋が脳内で再生される。
物が少なくて、全体的に色味がなく、無駄なものを一切置かないそんな部屋。小さい部屋で、ワンルーム。でも、温かみがあるのは木目調の調度品がちらほらと存在しているからで、とここまで考えておかしいことに気が付く。
あまりにも具体的に想像できてしまうのだ。まるで、どこかで見たことがあるみたいに。
思い出せそうなのに、思い出せなくて喉がむずむずする。
「クロタキさんって他に借りてたり持ってたりするお部屋あるんですか?」
「実家と仕事部屋が2つ」
「小さめのお部屋は? ワンルームの」
まくしたてるように聞く私の様子に空良くんも耳を傾けている。
「ある。ロンドンの路地裏に」
「木でできたテーブルがある?」
クロタキさんは頭を縦に何度か振った。
「私がそこへ行ったことは?」
と言いながらでこぼこした雨に濡れている石畳の上を高いヒールで転ばないよう気を付けて歩いている映像が頭をよぎった。滑らないように気を付けているけれど、なれない靴でつま先が痛み、それに前を歩く男性に追いつくために必死に足を前に動かした。
それは私?
「ある」
クロタキさんが答えると空良くんの目の色が変わった。
「ロンドンの柊一の部屋に古都がねえ。古都はイギリスにいる間俺の所にずっといたのに?」
棘を隠さないその言葉に私はどきりとしてしまう。空良くんがこんな意地の悪い言い方をするなんて……。これはもしかして嫉妬というやつ?
空良くんも呆れたように私の耳元で囁いた。クロタキさんは地獄耳なのか、その声に振り返るとふんと鼻を鳴らす。
怒っている様子でもないらしい。
「利便性を一番兼ね備えたのが今のこの部屋の状態なんだ。古都さん、僕の部屋はなにがあっても片付けないでほしい」
「は、はあ」
私は頷くしかなかった。病室に来るときは本当に小奇麗な格好でさらりと登場するクロタキさんがまさかこんな部屋に住んでいるなんて夢にも思わなかった、私の想像上のクロタキさんの部屋が脳内で再生される。
物が少なくて、全体的に色味がなく、無駄なものを一切置かないそんな部屋。小さい部屋で、ワンルーム。でも、温かみがあるのは木目調の調度品がちらほらと存在しているからで、とここまで考えておかしいことに気が付く。
あまりにも具体的に想像できてしまうのだ。まるで、どこかで見たことがあるみたいに。
思い出せそうなのに、思い出せなくて喉がむずむずする。
「クロタキさんって他に借りてたり持ってたりするお部屋あるんですか?」
「実家と仕事部屋が2つ」
「小さめのお部屋は? ワンルームの」
まくしたてるように聞く私の様子に空良くんも耳を傾けている。
「ある。ロンドンの路地裏に」
「木でできたテーブルがある?」
クロタキさんは頭を縦に何度か振った。
「私がそこへ行ったことは?」
と言いながらでこぼこした雨に濡れている石畳の上を高いヒールで転ばないよう気を付けて歩いている映像が頭をよぎった。滑らないように気を付けているけれど、なれない靴でつま先が痛み、それに前を歩く男性に追いつくために必死に足を前に動かした。
それは私?
「ある」
クロタキさんが答えると空良くんの目の色が変わった。
「ロンドンの柊一の部屋に古都がねえ。古都はイギリスにいる間俺の所にずっといたのに?」
棘を隠さないその言葉に私はどきりとしてしまう。空良くんがこんな意地の悪い言い方をするなんて……。これはもしかして嫉妬というやつ?
