
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第3章 旅立ち
手のひらをかざすと、舞い散る花びらの一枚が落ちてきた。キョンシルは小さな薄紅色の花片を指でつまみ、ふうっと息を吹きかける。桜貝のような花びらは、また、どこかに流れて飛んでいった。
「キョンシル、探したぞ。ここにいたのか?」
突如として呼ばれ、夜空を無数の花びらたちと共に漂っていたキョンシルの意識は現実に還ってきた。
振り向くと、トスがハッと息を呑んだ。
その時、キョンシルは風に髪を嬲られ、吹き乱されていた。そのせいで、後ろで一つに編んで垂らした長い髪のひと房がはらりと頬に垂れている。
桜の時季とはいえ、夜はまだ冷える。長らく外にいたため、キョンシルの透き通った白い膚がうっすらと紅く染まっていた。
「キョンシル、探したぞ。ここにいたのか?」
突如として呼ばれ、夜空を無数の花びらたちと共に漂っていたキョンシルの意識は現実に還ってきた。
振り向くと、トスがハッと息を呑んだ。
その時、キョンシルは風に髪を嬲られ、吹き乱されていた。そのせいで、後ろで一つに編んで垂らした長い髪のひと房がはらりと頬に垂れている。
桜の時季とはいえ、夜はまだ冷える。長らく外にいたため、キョンシルの透き通った白い膚がうっすらと紅く染まっていた。
