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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第3章 旅立ち

 そう、二人が出逢ったばかりの頃、十一歳のキョンシルにトスがよくしてくれたように。
 考えてみれば、キョンシルがトスをいつしか〝おじさん〟と呼ばなくなったように、トスもまたキョンシルの髪をこんな風に愛情込めて撫でてくれることはなくなっていたのだ。
 トスとキョンシルの関係は、ミヨンを仲立ちとして成り立っていた関係であった。なのに、今、二人を繋ぐ役目を果たしていたミヨンはいない。それでも、トスはミヨンが生きていた頃と同じように、キョンシルを娘だと言い切ってくれた。たとえミヨンがいなくなってしまっても、今度は〝信頼〟が二人を結びつけてくれるかもしれない。

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