
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第15章 王宮という名の伏魔殿
私、私ったら、どういうつもりなの?
トスという想い人がありながら、一方でソンに心傾いてゆく自分を意識している。それが途方もなく怖かった。もしかしたら、ソンが国王だから? この国の頂点に立つ男だから、自分はその地位に眼がくらんでいる?
キョンシルにとっては、そちらの方がまだマシだった。でも、違う。ソンに惹かれているのは、彼の座る玉座ゆえではない。彼の不器用な優しさや国王という立場に似合わない誠実さや純朴さを好ましいと思うのだ。
「―」
キョンシルが唐突に身を翻して去っていった後も、ソンはその場に立ち尽くしていた。その端正な面には濃い翳りの色が落ちている。
トスという想い人がありながら、一方でソンに心傾いてゆく自分を意識している。それが途方もなく怖かった。もしかしたら、ソンが国王だから? この国の頂点に立つ男だから、自分はその地位に眼がくらんでいる?
キョンシルにとっては、そちらの方がまだマシだった。でも、違う。ソンに惹かれているのは、彼の座る玉座ゆえではない。彼の不器用な優しさや国王という立場に似合わない誠実さや純朴さを好ましいと思うのだ。
「―」
キョンシルが唐突に身を翻して去っていった後も、ソンはその場に立ち尽くしていた。その端正な面には濃い翳りの色が落ちている。
