
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第3章 旅立ち
キョンシルは口を開きかけ、ささやかな逡巡に引き止められた。
だが、今、ここでトスに自分の出生の秘密を話したところで、何になる? キョンシルは生涯、崔氏の娘だと名乗り出るつもりはないのだ。いや、それどころか、母を嫁として認めなかった祖父なんて、こちらの方が祖父だと認めたくもない。
トスは彼女の戸惑いを別の意味に誤解したらしい。
「いや、そなたが嫌なら無理に話さなくて良い」
トスは穏やかに言うと、ふっと押し黙った。
短い沈黙が二人の間に落ちた。
トスは部屋を大股で横切り、片隅の祭壇の前にきちんと膝を揃えて座った。
だが、今、ここでトスに自分の出生の秘密を話したところで、何になる? キョンシルは生涯、崔氏の娘だと名乗り出るつもりはないのだ。いや、それどころか、母を嫁として認めなかった祖父なんて、こちらの方が祖父だと認めたくもない。
トスは彼女の戸惑いを別の意味に誤解したらしい。
「いや、そなたが嫌なら無理に話さなくて良い」
トスは穏やかに言うと、ふっと押し黙った。
短い沈黙が二人の間に落ちた。
トスは部屋を大股で横切り、片隅の祭壇の前にきちんと膝を揃えて座った。
