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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第3章 旅立ち

 自分でも愚かすぎるほど愚かな恋心だと、見込みのない恋だと十分判っていながら、敢えてトスの側にいられる道を選んだのだ。母とトスが結婚した後、家を出たとしても、家に帰るふりをしてトスの貌を見にくることはできるし、トスならば、たまに里帰りした義理の娘を快く迎え入れてくれるはずだ。
「キョンシル、先ほどの首飾りのことだが、気を悪くしないで聞いてくれ。俺はどうもあの首飾りが気になって仕方ないのだ。もちろん、そなたやソンニョが不当な方法で手に入れたとは露ほども考えてはいない。だが、現実として、あれほどの値打ち物が何故、そなたの手にあるのか。その謂われを教えてはくれないか?」
 トスになら、打ち明けても良い。この男なら信用できる。

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