
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第13章 第三話 【むせび泣く月】 出逢いはある日、突然に
「さあ、もう行きなさい。あの大男もそなたが盗みなどしなければ、向こうから手を出してきたりはしないだろうから、怖がることはない」
「あ、ありがとうございます」
子どもは声を震わせ、巾着を握りしめると逃げるように人混みに紛れた。
「お優しいんですね」
キョンシルに言われ、若者は白い頬をうっすらと上気させた。
「人として当然の行いだ。そなたの方こそ、か弱い女人の身であのような蛸入道の前に飛び出るのだから、たいしたものだよ」
「蛸入道―」
あまりにも言い得て妙な言い方に、思わず吹き出してしまう。
「あ、ありがとうございます」
子どもは声を震わせ、巾着を握りしめると逃げるように人混みに紛れた。
「お優しいんですね」
キョンシルに言われ、若者は白い頬をうっすらと上気させた。
「人として当然の行いだ。そなたの方こそ、か弱い女人の身であのような蛸入道の前に飛び出るのだから、たいしたものだよ」
「蛸入道―」
あまりにも言い得て妙な言い方に、思わず吹き出してしまう。
