
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第12章 第二話 【はまなすの咲く町から】 心のありか
風の中に潜む潮の香りがふいに強くなった。キョンシルは海から吹き寄せてくる風に眼を眇める。足許の浜木綿が海風に揺れていた。
今日の海は少しだけ波が荒い。見上げれば、空はどんよりと曇り、海面も空の色を映したかのように暗く淀んでいる。
生まれ生まれて、人は死ぬ。ならば、肉体を失った魂は今度はどこに行くのだろう。トスが十五年前に斬ったという友人チョンスは今、何を思い、罪の意識に苛まれるトスを見ているのか。
十五年前の不幸な出来事はトスだけではない、シヨンという女の人生をも大きく狂わせた。かつては友でありながら、己れの身勝手でその友二人を不幸のどん底に陥れたホ・チョンス。既に亡くなった人を悪く思いたくはないけれど、キョンシルはチョンスが憎かった。
今日の海は少しだけ波が荒い。見上げれば、空はどんよりと曇り、海面も空の色を映したかのように暗く淀んでいる。
生まれ生まれて、人は死ぬ。ならば、肉体を失った魂は今度はどこに行くのだろう。トスが十五年前に斬ったという友人チョンスは今、何を思い、罪の意識に苛まれるトスを見ているのか。
十五年前の不幸な出来事はトスだけではない、シヨンという女の人生をも大きく狂わせた。かつては友でありながら、己れの身勝手でその友二人を不幸のどん底に陥れたホ・チョンス。既に亡くなった人を悪く思いたくはないけれど、キョンシルはチョンスが憎かった。
