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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第12章 第二話 【はまなすの咲く町から】 心のありか

 今はトスと両親が暮らしていた屋敷も無人で、荒れ放題になっているという。
 最後にシヨンは微笑んだ。
「こんな昔話をしてしまって、もしかしたら、私はあの方に余計なことをしたと怒られるかもしれません。ですが、私はキョンシルさんにお願いしたいのです。トスさまにもう一度、生きる歓びを与えて差し上げて欲しい。トスさまがもう二度とは戻るまいと意を決して出ていった故郷に戻った―、そのことの意味はとても大きいと思います。きっとトスさまはやり直してみたいと思っていらっしゃるのでしょう。新しい人生を始めるのなら、あの方にとっては、どうしてもここに戻ってきて過去と向き合う必要があったのではないでしょうか。キョンシルさん、あの方の力になってあげて。あの方の差し出した手をけして放さないで」

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