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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第12章 第二話 【はまなすの咲く町から】 心のありか

 が、トスが都から離れた地方住まいとはいえ、両班のそれなりの家門の子弟であったと判った今では、そのことについてもすんなりと理解できた。
「トスおじさんのご両親は、どうなったのですか?」
 トスに両親について訊ねた時、既に亡くなっていると教えられた。事件の時、彼の両親はどうしていたのだろう。
 シヨンは軽く首を振った。
「お父上は八年前に亡くなられました。トスさまのお父上は町では名の知れた学者でもあったのです。トスさまはお父さまを心から尊敬していました。あの事件の後、ご実家を出られたのも、ご立派なお父さまに対してご自分の罪深さを恥じられてのことだったのかもしれません。お母さまの方は三年前までご健在でした。最後までトスさまのお帰りをお待ちになっていたのですが」

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