テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第12章 第二話 【はまなすの咲く町から】 心のありか

「事件後、トスさまはお家を出て、海辺の寺で過ごされていたのです。姿こそ俗世にとどまったままの姿でしたが、現実は念仏三昧の修行僧のような生活でした。トスさまの姿がかき消すように見えなくなったのは、事件のあった一年後、チョンスの両親が自害して果てた直後でした」
 トスの父と寺の住職慈心が友人であったことは、慈心和尚当人から聞いている。であれば、和尚が罪の意識に苛まれるトスの身柄を預かったことにも合点はゆく。
 トスは父の実家崔氏や祖父崔一載について、キョンシルの知らない様々なことを教えてくれた。何故、自称〝流れ者の剣士〟であるトスが都の上流両班について豊富な知識を有しているのか。あの時、疑問に思ったことを今更ながらに思い出していた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ