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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第12章 第二話 【はまなすの咲く町から】 心のありか

「昨夜、お寺にトスさまを訪ねていったのも、そのことだったのです。恥を申し上げるようですが、良人の側妾が身ごもりましてね。良人がその女を屋敷に迎え入れるなどと言うものですから、私、家を飛び出してしまいましたの。私に子ができないのだから、側妾に子を産ませるのは致し方ないとしても、同じ屋根の下に暮らすなど、女としては耐え難い仕打ちです」
 毅然として言うシヨンには、やはり両班の令嬢として誇り高く育てられた矜持と気高さがほの見えた。
 良人の行いに憤慨したシヨンは家を出て、そのままトスを訪ねてきたのだという。シヨンは良人と別れて実家に戻ると言い張ったが、トスは、もう一度夫婦でよく話し合うようにと言い聞かせて彼女を嫁ぎ先に帰した。

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