テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第12章 第二話 【はまなすの咲く町から】 心のありか

 だが、いつも群れて遊んでいた三人の関係にも終止符を打つときがきた。シヨンの輿入れが決まったのだ。やがて十六の春、シヨンは町の富裕な商家に嫁いだ。シヨン、トス、チョンス、三人ともに家門はそう高くはないが、両班の子である。しかし、田舎の中流両班など、身分だけが高くても内実は庶民と変わらない慎ましやかな生活を送っているというのが実情だ。
 シヨンの両親は娘には名ばかりの格式よりも、贅沢のできる生活を与えてやりたくて商人に嫁がせたのだった。
 二年後、シヨンはめでたく懐妊した。愛のない結婚ではあったけれど、良人は誠実で妻を大切に労ったし、婚家での暮らしは夢のように幸福であった。シヨンの腹の子も順調に育ち、シヨンは妊娠八ヶ月を迎えていた。そんなある日、皆の運命を一転させるあの出来事が起こった―。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ