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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第12章 第二話 【はまなすの咲く町から】 心のありか

 女はどこか突き放す口調で言う。キョンシルはカッとなって叫んだ。
「あなたこそ、どこの誰なの? 昨夜、私は、あなたとトスおじさんがお寺で忍び逢っているところを見たのよ。その後、トスおじさんは悪夢を見たらしくて、眠りながら物凄くうなされていたわ。あなたはどうして、トスおじさんをあんなに苦しめるの?」
 女が大きな眼を見開いた。
「トスさまが悪夢を見て、うなされていたというのですか?」
「そう。まるでこの世の終わりが来たかというような苦しみ方だったの。トスおじさんは剣術だけでなく、精神的にとても強い人だわ。なのに、たかだか夢を見たくらいで、あそこまで怯え苦しむなんて、どう考えても普通じゃない」

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