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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第12章 第二話 【はまなすの咲く町から】 心のありか

「キョンシルさんは何か思い違いをしているようですね。あの方がおっしゃっていましたわ。惚れた娘がいるのに、上手く想いを伝えられないから、もどかしくてならないと。今だって、あの方があなたの話ばかりを繰り返しするものだから、初対面なのに、キョンシルさんだとすぐに判ったくらいですもの」
「―」
 キョンシルが弾かれたように面を上げた。
 女の真摯な表情がキョンシルを鷲掴みにした。
「トスさまは、あなたのことを深く想っておいでです」
「そんなはずはないわ。トスおじさんが私のことを想っているだなんて、あり得ない」
 キョンシルは夢中で首を振る。
「私の言葉がお信じになれないなら、直接、トスさまに訊ねると良いでしょう」
 

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