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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第12章 第二話 【はまなすの咲く町から】 心のありか

「たった今、私はお寺にあの方を訪ねていったのですが、いらっしゃいませんでした。ご住職さまにお訊きしたところ、キョンシルさんが急にいなくなったので、あの方が大騒ぎして探しに出ていったのだとおっしゃっていました」
 女の言う〝あの方〟には随分と親密な響きがこもっている。そして、それが誰を指すのかは明らかだ。
「そのことが、あなたとどう関係があるのですか?」
 我ながら嫌な言い方だと思う。だが、昨夜、満月にくっきりと照らし出された二人の姿を思い出すと、つい声が尖ってしまうのだ。
 女は小さく溜息をついた。

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