
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第11章 第二話 【はまなすの咲く町から】 真実
月光に浮かび上がる本堂は、壮麗な偉容を保ちながらも、どこか幻想的だ。月の光がまるで光の紗をかけたようで、どこもかしも昼間眼にする光景とは違って非現実的に見える。普段は夜に境内を歩くことはない。月に照らされた風景に見とれていた時、キョンシルは思わず声を上げそうになって、すんでのところで堪えた。
本堂の入り口の際で、ひと組の男女が向き合っている。というよりは、殆ど抱き合わんばかりに寄り添っていると言った方が良いだろう。
あろうことか、男の方はトス、更にトスに縋りついているのは二十代後半ほどの美しい女であった。少し離れた場所からでも、二人の顔は大体、判る。逆に二人のいる場所からでは、影になってキョンシルは見えないだろう。
本堂の入り口の際で、ひと組の男女が向き合っている。というよりは、殆ど抱き合わんばかりに寄り添っていると言った方が良いだろう。
あろうことか、男の方はトス、更にトスに縋りついているのは二十代後半ほどの美しい女であった。少し離れた場所からでも、二人の顔は大体、判る。逆に二人のいる場所からでは、影になってキョンシルは見えないだろう。
