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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第11章 第二話 【はまなすの咲く町から】 真実

 駄目、言っては駄目。これ以上、言ってしまえば、余計にトスおじさんに嫌われてしまう。ああ、でも、ここまであからさまに嫌悪を示されて、この先、トスおじさんとは二度と元の関係には戻れない。たとえ義理の娘という立ち位置でも良いから、この男の傍にずっといられればと、それだけが願いだったのに。
 もう側にいられないのなら、今になって隠し立てする必要もないだろう。
「判らない。でも、もうずっとずっと前から、私はトスおじさんだけを見ていたの。まだ子どもだった頃から、おじさんを好きだった。だから、お母さんが羨ましかった。トスおじさんの笑顔を独り占めしているお母さんが―。おじさん、私の方こそ、最低最悪の人間よ。私はお母さんが元気だった頃から、おじさんをそんな風に見ていたの。私の心は醜くて、汚れている。

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