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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第11章 第二話 【はまなすの咲く町から】 真実

 なのに、キョンシルは辛くてならなかった。とうとう言ってしまった。この生命尽きるときまで胸の奥底に閉じ込めておこうと、あれほど固く誓ったのに。その誓いを自分で破ってしまった。何て愚かな私。この自分の愚かさがトスにこんな苦しげな表情をさせていると思えば、尚更、自分で自分の首を絞めてやりたい。
「良いの。気にしないで。私が一方的にトスおじさんを好きになっただけで、おじさんは何の関係もないんだもの。迷惑なのは判ってるし、口に出すつもりはなかったのよ」
 キョンシルの眼からは絶え間なしに大粒の涙がしたたり落ちる。
「―いつからだったんだ?」
 トスの乾いた声が心をえぐる。

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