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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第11章 第二話 【はまなすの咲く町から】 真実

 キョンシルの瞳から大粒の涙が溢れ、白い頬を流れ落ちる。トスは無表情にキョンシルを見つめていた。これまで何とかごまかし続けてきた本音をひとたび口にしてしまえば、もう上辺だけの空しい関係を取り繕う必要もないのかもしれない。
 少なくとも、トスはそんな風に考えているのではないか。それを物語るように、トスの切れ上がった眼(まなこ)は何の感情も宿してはいなかった。
 でも、と、キョンシルは呟いた。
「でも、トスおじさんは、まだ私の応えを聞いてないわ」
「―」
 トスが心もち首を傾げ、キョンシルを見つめる。膝で固く握りしめたキョンシルの拳が少し緩んだ。キョンシルは何か言いかけ、空気を求める魚のようにわずかに胸をあえがせた。

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