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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第20章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 花びら占い

 その声を合図に、馬執事が両手に箱を捧げ持ち、恭しく運んでくる。やがて、その箱はキョンシルとトスの前に置かれた。
 見たところ、黒地に精緻な螺鈿細工が施されている。意匠は牡丹の花とつがいの蝶であった。
 朝鮮では、蝶は夫婦円満を表す縁起の良い図柄とされる。婚礼の祝いには確かにふさわしい。だが、祖父からの贈物というのは、どうやら、螺鈿細工の宝石箱ではなかったらしい。
「開けてごらん」
 優しく促され、キョンシルは宝石箱を手に取り、開いた。中には、翡翠のノリゲと耳飾りがおさめられている。深い緑色の宝玉が窓から差し込む陽差しに映え、燦然と輝きを放っていた。

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