
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第3章 旅立ち
「こんなに髪が乱れて、見苦しいわよね」
キョンシルが困ったように微笑むのに、トスが漸くいつもの笑顔を見せた。
「全っく、いつまで経っても、子どもなんだな」
トスは笑いながら手を伸ばし、乱れた髪を後ろへ撫でつけてやる。ついでに、くしゃっと頭頂部の髪をかき回した。
いつもどおりの穏やかな大人と子どもの時間が流れ始める。キョンシルの方は、トスが触れた髪の一部分だけがまだ熱を帯びているうな気がしていた。
しかし、トスの方がもう先刻の出来事などなかったかのようにふるまっているのに、自分だけ拘っているのもおかしい。思うに、あのときのトスのまなざしは、よく彼が母を見つめていた熱っぽさと同質のものが込められている。
キョンシルが困ったように微笑むのに、トスが漸くいつもの笑顔を見せた。
「全っく、いつまで経っても、子どもなんだな」
トスは笑いながら手を伸ばし、乱れた髪を後ろへ撫でつけてやる。ついでに、くしゃっと頭頂部の髪をかき回した。
いつもどおりの穏やかな大人と子どもの時間が流れ始める。キョンシルの方は、トスが触れた髪の一部分だけがまだ熱を帯びているうな気がしていた。
しかし、トスの方がもう先刻の出来事などなかったかのようにふるまっているのに、自分だけ拘っているのもおかしい。思うに、あのときのトスのまなざしは、よく彼が母を見つめていた熱っぽさと同質のものが込められている。
