
短編集
第5章 イブと自販機と男
男は自販機の前に立った。
白色の機体で、液晶がついている。
もちろん、ホットコーヒーは何種類か販売されていた。
『こんばんは。ご利用、ありがとうございます。』
―っと!
自販機から突然音声が流れた。
合成された音声であることを感じさせない、女性の優しく柔らかい声だった。
―進んでるな、この自販機。
音声が出る自販機があることぐらい男も知っている。
ただ、あまりに人間臭い話し方だったので、男はそう感じたのだ。
「こんばんは。ホットコーヒーをくれないか」
男は声に出して自販機に話し掛けてみた。
もちろん、返事なんて期待していない。
他人が誰もそばにいなかったので一人、遊んだつもりだった。
…寂しさを紛らすために。
『どうぞ。今日は冷えますからね。』
「えっ?」
『料金を入れて、ご希望の商品のボタンを押してください』
―いや、今、事務的な案内の前に、俺の言葉に返事をしなかったか?
男は自販機の意外な反応に少し戸惑った。
そして、男は料金を入れる前に言ってみた。
「君も寒い中、ご苦労様。」
『お気遣いありがとうございます。ここでお客様を待つことが私の仕事ですから、大丈夫ですよ。優しい方に出会えて幸せです』
「あ、ああ。こちらこそ…」
間髪入れない返事だった。
―あらかじめ客の言葉に対応して話すようにプログラムされているのだろうか。
いや、それにしては、うまく言えないが、人間らし過ぎる…。
白色の機体で、液晶がついている。
もちろん、ホットコーヒーは何種類か販売されていた。
『こんばんは。ご利用、ありがとうございます。』
―っと!
自販機から突然音声が流れた。
合成された音声であることを感じさせない、女性の優しく柔らかい声だった。
―進んでるな、この自販機。
音声が出る自販機があることぐらい男も知っている。
ただ、あまりに人間臭い話し方だったので、男はそう感じたのだ。
「こんばんは。ホットコーヒーをくれないか」
男は声に出して自販機に話し掛けてみた。
もちろん、返事なんて期待していない。
他人が誰もそばにいなかったので一人、遊んだつもりだった。
…寂しさを紛らすために。
『どうぞ。今日は冷えますからね。』
「えっ?」
『料金を入れて、ご希望の商品のボタンを押してください』
―いや、今、事務的な案内の前に、俺の言葉に返事をしなかったか?
男は自販機の意外な反応に少し戸惑った。
そして、男は料金を入れる前に言ってみた。
「君も寒い中、ご苦労様。」
『お気遣いありがとうございます。ここでお客様を待つことが私の仕事ですから、大丈夫ですよ。優しい方に出会えて幸せです』
「あ、ああ。こちらこそ…」
間髪入れない返事だった。
―あらかじめ客の言葉に対応して話すようにプログラムされているのだろうか。
いや、それにしては、うまく言えないが、人間らし過ぎる…。
