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クラスの人気者は、刹那の2時間を買い戻したい。

第3章 千堂 皐月

春休みに職員会議があり、新年度の方針やクラス運営の話し合いがあった。

皐月は三年生の担任。気が引き締まる。

生徒指導もそうだが、保護者対応の方が骨が折れる。

午後、校長に呼び出された。

校長室に行くと、教頭と学年主任が同席していた。

「全員揃いましたね。では千堂先生に報告することがあります」

校長の緑川が穏やかな口調で話しはじめた。

「来年度A組に編入生が一人います。白瀬刹那さん。

彼は今年二十歳です。二年前、高校二年のとき事故に遭い
二年間意識不明でした。半年前に意識を取り戻し、リハビリをして
この春、高校三年生として我が校に通学することになりました」

校長が一気に話すと、教頭が個人票を皐月の前に差し出した。

プロフィールと共にクリップ止めされた写真。

おそらく病室で撮った写真。冷めた目をした男子が写っていた。

「もう一つ、白瀬さんは記憶喪失です。これはここにいる四人だけの秘密事項です。後日、養護の岬先生には伝えておきます」

皐月は書類を手に取り、読み込んだ。

(記憶喪失……大丈夫なのかしら)

「校長、彼は学校生活を送れるのでしょうか?」

「そうですね、こればかりは実際始まらないと分かりません。しかし、理事長の甥御なので、断れませんでした」

「理事長の甥なのですか」

学年主任の柏原が驚いた声をあげていた。

「そうです。また彼は特例としてバイク通学と校長室での喫煙を許可しています」

「え、職員でさえ禁煙を強いられているのに……」

「柏原先生、そこですか?」

皐月は思わず発言していた。

「いや、冗談ですよ。ははは」

とても冗談には聞こえない。皐月は校長に尋ねる。

「理事長は何か他に要望はおっしゃていましたか?」

「青春をやり直して欲しいと言ってましたよ」

校長は少し困ったように微笑んでいた。

「……本人はどう思っているのかしら」

皐月は写真の中にいる刹那の顔を眺めて呟いていた。

この件を受けて、皐月なりに記憶喪失のことや過去に留年した生徒がいないかなど調べて、彼を迎え入れる準備を整えていた。

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