お題小説第1弾「マヨヒガ」
第1章 高人の話
☆☆☆
ファミレスのガラス窓の外に、
濃い陰を落とす夏の日差し。
うるさいほどに鳴くセミたちの声が、
少し遠くに聞こえた。
私は、この高人の話を聞いて、
ただ、息を呑んだ。
会社の同期で、私の恋人だった高人。
彼が私に手を出すことがなかったのは、
私を大事にしてくれているからだと思いこんでいた。
いざ、結婚の話が出たとき、
彼が決心したかのように、
語ったのが、この話だったのだ。
そして、彼は言った。
「ぼくは、紗栄子と結婚できない」
と。
一瞬、どう理解していいか、
わからなくなった。
「待って!」
とっさに言った私に向かって、
彼は寂しそうに笑うと、
黙って、その場を立ち去った。
その日以来、
彼は会社にも来なくなった。
完全に、姿を消した。
この夏の光に溶けてしまったみたいに。
☆☆☆
彼がいなくなって1週間後、
私は夢を見た。
薄暗い日本家屋の部屋を、庭から眺めている。
そこにひとりの美しい女性が、
女物の着物を着た高人を掻き抱いている。
うっとりと陶酔した表情で、
その手に抱かれる高人の唇に、
彼女は唇を寄せていた。
その目は、どこまでも深い、
女の業を湛えていた。
ファミレスのガラス窓の外に、
濃い陰を落とす夏の日差し。
うるさいほどに鳴くセミたちの声が、
少し遠くに聞こえた。
私は、この高人の話を聞いて、
ただ、息を呑んだ。
会社の同期で、私の恋人だった高人。
彼が私に手を出すことがなかったのは、
私を大事にしてくれているからだと思いこんでいた。
いざ、結婚の話が出たとき、
彼が決心したかのように、
語ったのが、この話だったのだ。
そして、彼は言った。
「ぼくは、紗栄子と結婚できない」
と。
一瞬、どう理解していいか、
わからなくなった。
「待って!」
とっさに言った私に向かって、
彼は寂しそうに笑うと、
黙って、その場を立ち去った。
その日以来、
彼は会社にも来なくなった。
完全に、姿を消した。
この夏の光に溶けてしまったみたいに。
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彼がいなくなって1週間後、
私は夢を見た。
薄暗い日本家屋の部屋を、庭から眺めている。
そこにひとりの美しい女性が、
女物の着物を着た高人を掻き抱いている。
うっとりと陶酔した表情で、
その手に抱かれる高人の唇に、
彼女は唇を寄せていた。
その目は、どこまでも深い、
女の業を湛えていた。
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