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お題小説第9弾『蒼い夏』

第1章 蒼い望月

 1

「おいで…
 田舎は何もなくてつまらないでしょう?」
 縁側で涼む悠里さんが、垣根の隙間から覗いていたボクを見つけ…
 手招きしてくる――

「あ…は、はい」
 ボクはまるで小躍りし…
 慌てて履いていたスニーカーを、勢いよく脱ぎ捨てて、縁側に掛け上がる。

「ビールでも飲む?」

「え?」

「うふ、ウソよ」

「あ…」

「麦茶ね」
 悠里さんはそんな茶目っ気な冗談を言って立ち上がる――

 ボクは、その後ろ姿を…
 いや、そのカタチの良い魅惑的な脚を…
 そのスラリとしたふくらはぎを眺め…
 ドキドキと、心昂ぶらせてしまう。

 なんて綺麗な脚なんだ…
 ボクは、すっかり魅入っていた――

 悠里さんて、幾つなんだろうか?……

 ボクは…
 高校が夏休みに入って直ぐに、この山あいの田舎にある父方の実家に、泊まりにきていた――

 それは、あまりにも酷い喘息の症状の療養と、いや、実は、それは建前で…
 両親の不仲による離婚協議を見たくはないという理由により、大好きなおばあちゃんの元へと泊まりに来たのであった。

 だが皮肉な事に、来て直ぐにおばあちゃんは転んで入院してしまい…
 まるで留守番に来たかの様に、なってしまったのだ。

 だがここは隣近所の繋がりが強い田舎…
 都会育ちのボクの想像など及ばないくらいに濃密で、いや、まるで筒抜け――
 
 入院したおばあちゃんの面倒や、急遽一人で寝泊まりするハメになってしまったボクの面倒も全て…
 隣近所の人達が、それも嬉々として、おせっかいなくらいにしてくれるのだ。

 だからボクの存在も、夏休みに来た理由も、何もかも知っていて、その上で大歓迎してくれ…
 朝、昼、晩と、代わる代わる食事まで運んでくれるのである。

「あらぁ、浩ちゃんそっくりだわぁ…」
 浩ちゃん…父である。
 特に、三軒隣のおばあちゃんの妹が、ほぼ、毎日通っては、おばあちゃんや父の昔話しをしてくれていた…

「ウチに泊まればいいのに…」
 最初から、そう言われていたのだが…

 実は――
 隣の家の、この悠里さんの姿を認め、その彼女のあまりの美しさに魅了されてしまい…
 こうして留守番と称し、おばあちゃん家に滞在しているのだ。

 だって…
 この家の垣根の隙間から、悠里さんの姿がよく見え、いや…

 よく覗けるから――


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