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SAKURA (さくら)

第8章 五月 皐月めい

 1

「お入りくださいませ」

「……」

「本部長サマ、どうぞこちらへ…」

 専務室のドアが開き…

 本部長が、顔を上げた瞬間…

「え、あ………」

 それは、まるで、驚きの衝撃で、彼の呼吸が止まったかの様に…

 見て、とれた――

「さ、どうぞこちらへ…」

 わたしは、衝立の奥へと手招きをする…

「…………」

 まだ、呼吸が、まるで止まっているかの様で…
 いや、息が出来ないみたいに見える。

 そして反対に…

 わたしの心は…

 激しく、昂ぶり、高鳴っていた…

 いや…

 快感に、震えていた――

 快感…

 それは、きっと復讐心からの高揚――

 ううん、違う…

 復讐心なんて、そんな、強く、激しい、どろどろとした大袈裟な想いなんかではなく…

 それは、そう…

 やったぁ――

 というくらいの軽い、快活な心の昂ぶり…

 歓喜…

 喜び…

「あ…め、めい……」

 彼、本部長は、わたしの前を通り過ぎる刹那…

 そう、小さく、わたしの名前を呟いた。

「……何も……話して…ませんから………」

 そして、わたしは、小さく、囁く――

 そう…

 それは…

 復讐心等のどろどろとした怨みなんかではなくて…

 まるで、子供の頃の様な…

『い、今まで、お世話になりました…』

『誰にも、いいませんから……』

『さよなら…』

『誰にも…話して…ませんから…』

 単なる…

 ただの、仕返しだから―――



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