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蜜会…春の舞い

第1章 春の舞い

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「あ、桜が…」
 秘蜜の逢瀬の勢いのままに同窓会を抜け出し、一歩外に出ると…
 『朔(ついたち)の月』の夜闇の中…
 満開の夜桜が静かに風に舞っていた。

「きれいね…」

「あ、うん」

「なんか、まだ、寒いね」

「そうだな…」
 颯太はそう応え…

「あ………」
 不意にわたしの手を引き、足早に歩き出した。

「…………」

 どこに…
 と、訊こうとしたのだが…
 手を引く彼の先にそびえ立つ、高層ホテルの窓の煌めきを目にし、わたしは黙った。

 まだ寒い春の夜の冷気が、昂ぶりに火照った心を緩やかに包み込み…
「………………」
 引かれ、握る、手の熱が、二人の心を繋いでくれる。


「……………」
 そして、静かに昇るエレベーターの中で、他の客に隠れる様に、指を忍ばせていく。
 
 絡まる指先から想いが交わり…
 吐息を必死に抑え、肩に寄り添い、鼻先を押し付け、懐かしい匂いを染み込ませていく。
 
 そして、触れ合う肩の温もりから…
 二人の時間を埋める想いが伝わってくる。
 
 

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