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『春がすみ(春霞)』

第1章 春がすみ…

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 前日の春雨が嘘のように晴れ上がり、朝から気温も急上昇し、日向では汗ばむくらいであった…
 遠くの山の稜線は、淡い春霞に溶けている。

「ふぅぅ、今日は暖かいを越して暑いくらいだわねぇ…」
 義姉はハンカチで額の汗を拭い…
「それに花粉もすごくて、嫌になっちゃう…」 
 そう呟きながら、今度はそのハンカチで鼻先、口元を覆う。

「は、はぁ…」
 確かに暑い…
 俺も背中に汗を滲ませている。

「早いわよねぇ…
 もう一周忌なんてね………」
 本堂から墓へと通じる石畳をカツカツと、ヒールの音を立てながら、義姉はそうポツリと呟いた。

「あ、はい…喪服も暑いですね………」
「あぁ、もお一也くんたら、ヤダわぁ」
「え、あ?」
「わたしは今は、あっという間に一周忌ねって言ったんだけどぉ」
「あ、は、はぁ、すいません…」

「もお、ホント、大丈夫?、もう一年経ったのよ……」
 と、義姉は後ろを振り向き、心配そうな、いや、怪訝気味な目を向けてきた。

「あ、はい、す、すいません」
「まぁ、一周忌の法要したから思い出しちゃったのは仕方ないけどさぁ…
 もう、そろそろさぁ…………」

『もうそろそろさぁ……』
 確かに、もう一年が…
 妻の美春が、交通事故で突然逝ってから一年…
 そして、この義姉の言葉の意味も、分かってはいる。

 だけど…
 俺には…
 まだ、一年なんだ……
 まだ、一年しか経っていないんだ…………。

 
 
 

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