アシスタントで来ただけなのに…!
第1章 鬼才漫画家、市川ルイ
「ちょっと待ちなさい。これ、おかしいわ」
そう言うと、書面を私に向けておかしいと言う文章を指でなぞった。
「ほら見なさい、『ただいま募集している、漫画家市川ルイ様の元へアシスタントとして派遣します。以下、市川ルイ様のご住所とアドレスです。別紙で地図を載せてます』」
「い、市川!?あの市川ルイ!?」
全身が震えた。
勢いよく立ち上がって叫ぼうとしたら母が更に阻止した。
「だから待ちなさいって!」
「加奈子。落ち着いて。これ怪しいわ」
母の言葉に首を傾げた。
「だって貴方面接すらしてないわ。それに新卒の新人アシスタントになるのに、なんで学歴も実力も本人から確認しないの?」
「そ、それは…これからするとかじゃない?」
「なんでこれからなの?書類が通っただけの人間に、面識もまだないのに個人情報を教えるの?」
ぽけーっと宙を見上げる私に母親は大きくため息をついた。
「加奈子、これはいたずらよ。今回は諦めなさい」
そう言い残すと、母親はやれやれと首を横に振り部屋出て行った。
一人だけになった空間で、私は部屋の本棚に並んだ市川ルイの漫画を眺めた。
「市川ルイ…あの…市川ルイ…!」
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