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Kalraの怪談

第63章 新・六十三夜目:夜市のたまご

私がいとこのK子が夫からひどいDVを受けているのに気付いたのは3ヶ月前だった。

よくある話だ。最初は優しいが、次第にDV男の本性を表し、最近ではささいなことで手も上げるようになったらしい。
私が再三、警察に相談に行こうと言っても、K子は頑として首を縦に振らなかった。

そして、こんな話をし始めた。
「この間、ふらふらとS神社のあたりを歩いていたら、夜市が立っていたの。不思議なことに、見物人もいなければ、祭囃子が聞こえるわけでもない。しんとした中、ただただ、青色の提灯の明かりに照らされた夜店が幾つも続いていたの。」

「突然、お嬢さん、と声をかけられた。見ると、狐の面をかぶった男の売り子が手招きをしていた。その売り子が『この卵を育てなさいよ』と言って、売り物の卵を見せてくれた。」

「その時、ああ、これが私を解放の楽園に連れて行ってくれるって、なぜかそう思ったの。そして、あの卵を買ったのよ。」

だから、大丈夫…
そう言って、K子は傷ついた顔で笑った。

実は今、その卵は、私がこの日記を書いているパソコンを置いた机の上にある。

結局、K子は夫の激しい暴力のせいで、昨日、亡くなってしまったのだ。夫は逮捕され、夫の寝室にあったこの卵だけが警察官の手から私のもとにやってきたというわけだ。
なんてことはない、それは石でできた卵型のオブジェである。

結局、解放の楽園なんて言っても、どうにもならなかったじゃない。

私は悔しくなった。あの時、もっとなにか手を打てばよかった…。

それにしても、あんなに大事そうに話していた卵を、何でK子は夫の寝室に置いていたの?

その時、ピシリ、と音がした気がした。
ふと見ると、石の卵にヒビが入っている?

あれ…?
もし、これが本当に何かの卵だとして、
夫の寝室で、その何かが生まれる必要があったとして…

いやいや、そんなわけないか。
頭を振る。

ぱりり・・・。音がする。卵が割れる。

「え?嘘・・・・」

『ソレ』が私の目の前で、ユックリと這い出してきた。
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