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paradise lost

第1章 overture

『こんなにすんなり、新入生代表が決まるのは理人君以来だ』
『理人さん…?』
俺が首を傾げたのを見た孝太郎はああ…と頷き、遠い目をした。
『あれから五年になるか…』
孝太郎が悲しそうな顔をして外を見上げた。
『理人君は入学早々、来栖学園開校以降の天才と呼ばれていてね、品行方正で文武両道を地で行くタイプでね…私は彼のピアノの講師をしていたんだけどで、一を知れば十を学ぶ聡明な子でね、彼が私の息子ならさぞ鼻が高かっただろうね』
理人に対して孝太郎の好感が高いのは俺にも何となく分かる。分かるが、俺はイマイチ孝太郎の話を真剣に聞く気になれなかった。どうしても他人事…として聞き流してしまいそうになる。
『見た目もかなり良かったからね、かなりモテモテだったよ』
『はあ…?』
孝太郎の下世話な話に俺は思わず眉を顰める。
『在学中の活躍はもちろん、卒業後の活躍も目覚ましくてね、私は彼が日本の音楽界を引っ張って行くんだと思っていたんだけどね』
孝太郎の目に哀愁が宿る。俺はその哀愁の色が何なのか分からない。孝太郎の抱いている感情を理解出来ない俺は置いてけぼりを喰らう。
『だから、君には結構期待しているんだよね』
恐らく孝太郎は自慢の教え子と望まぬ別離になっただろう事は何となく俺にも分かった。それが俺に対する期待する理由なのも。ただそれを理解出来ても何故か共感までは出来なかった。俺は何故か理人に対しあまり良い感情を抱けない。
『……微力ながら善処します』
だから俺は形式的な返事しか出来なかった。それが孝太郎にどう写ったかは分からないが、俺は孝太郎の話に無難な返事しか出来なかった。







「……って、言う事があった」
俺は仕事から帰って来た保護者の玉木 海斗(タマキ カイト)に高校受験の合否の報告と新入生代表の挨拶を頼まれた事を説明していた。
「あまり目立ちたくはなかったんだけどね」
「それは新入生代表の件と関係なく無理だから諦めろ」
目立ちたくないと言う俺にドライな突っ込みを入れる海斗に俺は肩を竦めた。
「真紘にも同じ事を言われたよ」
別の高校に進学した親友の真紘にも海斗と似たような事を言われた。

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