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第13章 【番外編】ある日の話


歩道橋で見掛けた女。

顔は知らない。
後ろ姿だったから。


マンションに帰って煙草を咥えたけど。

「…ぁっちっ!…」

ボーッとし過ぎてフィルターまで燃えて…
慌てて灰皿に捨てた。

細くて…
制服を着た女の腕も足も、少しの力で折れてしまいそうな程だった。

何より…

後ろ姿が儚くて。
ふわっ…と、消えてなくなりそうで。


サボり過ぎて留年し掛けた俺。

別に俺はよかった。
それでもショウがやたら煩ぇから、渋々通ってた高校。

怠い体を引き擦る様に歩いてた。

通勤通学の人波の中、面倒過ぎて帰ろうかと思いながら階段を上がる。

三分の一くらいの所で、俺は足を止めた。

歩道橋の真ん中。
欄干の側に立つ、制服姿の女。
スカートがヒラヒラ揺れてる。
そこから伸びる足が、吃驚するくらい細いと思った。

ジッと何処かを見つめたまま、ピクリとも動かない。

死ぬ気、か…

根拠もなくそう思った。
何処の誰かも知らねぇのに。

もっと言えば、顔も見えねぇのに…

どのくらいそうしてたかは分かんねぇ。
ただただ、女を見つめたまま動けずに居た。

一瞬、人波が増え女の姿が見えなくなる。

途切れた時には、もうそこに女は居なかった。



翔「…おぉチカ♪……今日も真面目に来たな?偉い偉い(笑)」

「……煩ぇ」

真っ先に屋上に行けば、ショウが煙草を咥えながら笑う。

くだらねぇ話をしてる。

大半がバイクの話だったと思う。
だけど俺の頭の中は、さっき見た女の姿で。

翔「…チカ?どうした?」

「……何が」

翔「何か変だぞ?…具合でも悪ぃのか?」

「あー……まぁ…軽く、頭痛ぇ」

翔「飲み過ぎか(笑)?」

「…かもな(笑)」

誤魔化した。

餓鬼の頃から一緒に過ごしてきたショウだけど…
何となく、言えなかったんだ。

気恥ずかしい…そんな感じ。

今まで、女なんてヤるだけで良かったから。
今更、顔も見てねぇ…後ろ姿だけの女に、頭の中がいっぱいなんて…
照れ臭い。

学校が終わってマンションに帰って。

翌朝、また歩道橋へ向かう。

やっぱり、同じ場所に立つ女。

俺は、毎日毎朝…
女の姿を見る為だけに、高校へ行く。
一週間経った頃。
ショウがやたら毎日サボらず登校する俺を不思議がり始める。

それでも言えずに居た。

だから、時々引き返し帰る日を作った。

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