
龍虹記(りゅうこうき)~禁じられた恋~
第1章 落城~悲運の兄妹~
「お前らは、この小僧を押さえておれ」
嘉瑛のひと声で、牢番の二人が千寿の身体を上から押さえ込んだ。
「な、何をするッ。放せ」
千寿は驚愕し、渾身の力で暴れたが、大の男二人に両手と両脚を押さえ込まれていては、身動きもままならない。
「さて、犬の調教もなかなか骨が折れるものよ」
嘉瑛は愉しげに言い、牢番が運んできたばかりのそれを手に取った。丁度、大人であれば両手でひと抱えできるほどの鉄製の器から取り上げたものは―、真っ赤に染まった鉄(てつ)鏝(ごて)であった。
「―!」
流石に気丈な千寿も息を呑んだ。
「いかに意地を張り通してみても、流石に怖いか? 今ならまだ間に合うぞ? 俺の脚許に這いつくばり、申し訳ございませんと詫びれば、仕置きだけはこらえてやろう。犬ならば犬らしう素直に飼い主の言葉に従えば、むやみに痛い想いをする必要もなかろう」
「構わぬ、好きにするが良い」
千寿が素っ気なく言い、プイと顔を背ける。
平静であった嘉瑛の顔が朱に染まった。
まるで彼自身が手にした鉄鏝のように、怒りに顔を紅く染めている。
「なるほど」
呟くと、嘉瑛はいきなり千寿の着ている汚れた小袖の前を乱暴に引き裂いた。
それは脱がせるというよりは、破るといった方が良い荒々しさであった。上半身、裸になった千寿の白い身体を一瞬、嘉瑛が眼を奪われたように見つめた。
なめらかな白磁のような膚は傷一つなく、まだ少年期の清らかで初々しい肢体は、胸の膨らみこそないが、成長前の少女を彷彿とさせる。しばらく見惚(みと)れたように千寿の身体を見つめていた嘉瑛がハッとした表情になった。
眼顔で二人の牢番に合図すると、二人は心得顔で千寿の身体をまるで餅でも引っ繰り返すように呆気なく裏返した。
顔を床に押しつけられるという実に屈辱的な格好でうつ伏せになった千寿は、これまで以上に抗った。
「止めろッ」
千寿は依然として二人の男たちに一切の自由を奪われたままの状態である。
嘉瑛が熱した鉄鏝を千寿の白い背中に押し当てた。
嘉瑛のひと声で、牢番の二人が千寿の身体を上から押さえ込んだ。
「な、何をするッ。放せ」
千寿は驚愕し、渾身の力で暴れたが、大の男二人に両手と両脚を押さえ込まれていては、身動きもままならない。
「さて、犬の調教もなかなか骨が折れるものよ」
嘉瑛は愉しげに言い、牢番が運んできたばかりのそれを手に取った。丁度、大人であれば両手でひと抱えできるほどの鉄製の器から取り上げたものは―、真っ赤に染まった鉄(てつ)鏝(ごて)であった。
「―!」
流石に気丈な千寿も息を呑んだ。
「いかに意地を張り通してみても、流石に怖いか? 今ならまだ間に合うぞ? 俺の脚許に這いつくばり、申し訳ございませんと詫びれば、仕置きだけはこらえてやろう。犬ならば犬らしう素直に飼い主の言葉に従えば、むやみに痛い想いをする必要もなかろう」
「構わぬ、好きにするが良い」
千寿が素っ気なく言い、プイと顔を背ける。
平静であった嘉瑛の顔が朱に染まった。
まるで彼自身が手にした鉄鏝のように、怒りに顔を紅く染めている。
「なるほど」
呟くと、嘉瑛はいきなり千寿の着ている汚れた小袖の前を乱暴に引き裂いた。
それは脱がせるというよりは、破るといった方が良い荒々しさであった。上半身、裸になった千寿の白い身体を一瞬、嘉瑛が眼を奪われたように見つめた。
なめらかな白磁のような膚は傷一つなく、まだ少年期の清らかで初々しい肢体は、胸の膨らみこそないが、成長前の少女を彷彿とさせる。しばらく見惚(みと)れたように千寿の身体を見つめていた嘉瑛がハッとした表情になった。
眼顔で二人の牢番に合図すると、二人は心得顔で千寿の身体をまるで餅でも引っ繰り返すように呆気なく裏返した。
顔を床に押しつけられるという実に屈辱的な格好でうつ伏せになった千寿は、これまで以上に抗った。
「止めろッ」
千寿は依然として二人の男たちに一切の自由を奪われたままの状態である。
嘉瑛が熱した鉄鏝を千寿の白い背中に押し当てた。
