
方位磁石の指す方向。
第3章 scene 3
「それって…俺と、同じ?」
「…あぁ。」
誰かに特別な感情を抱くなんて、
初めての経験で。
翔さんの優しい顔が見えて、
嬉しくなった。
「俺の、こと…好き?」
「あぁ、二宮のことが好きだ。」
「…うん…」
翔さんの息が、耳を擽る。
部活帰りなのか、ちょっと汗の匂い。
あと、汗拭きシートの甘い匂い。
「…智と相葉さんは、サボり?」
「ははっ、だろうな。
二宮もサボってんじゃん?
学校。」
「それはっ…」
翔さんに、会いたいけど
会いたくなかったから…。
「わかってるよ。
原因、俺だもんな。ごめんな。」
「…ううん。違うよ…
俺、我儘だもん。
翔さんが誰かと一緒に笑ってるの見ると、
すっごい嫌だ…。
こんなの、だめかもしれないけど、
俺だけの翔さんがいいんだよ…。」
俺、すっごい我儘。
翔さんは俺から離れて、
微笑んだ。
そして、くしゃっと、
俺の頭を撫でた。
「…いいよ。
まだ、好きって気持ちは、
よくわかんないけど…。
俺も、二宮が誰かと一緒に笑ってるの
嫌だから…。
でも…まだ、付き合えない。」
「え…?」
