
方位磁石の指す方向。
第15章 scene 14
櫻井side
こんな真昼間にコンビニで
こんなものを…
爽やかに対応してくれたけど、
内心絶対、「こいつやべえ」って
思われたんだろうな。
自嘲気味に笑ってから、
「まあいいか」とすぐに開き直る。
二宮が待ってる。
俺の大好きな二宮が。
それだけで歩くスピードは早くなるし、
頬は自然と緩む。
最近連絡が取れてない、
とずっと自分でも考えていた。
でも二宮も、受験生だ。
そのことを思えば、
俺と話してる暇なんてないんだろうな
と勝手に思ってしまっていたから。
悪いことをしていたと思う。
あんなに喜んでいる二宮は初めて見たし。
これからは…いや。
これからも、二宮に連絡は入れよう。
たとえ会えなくたって、いいんだ。
声が聞けるだけでも、
やり取りしてるだけでも。
「ただいまー…」
玄関で靴を脱いでいる間も、
二宮は出てこない。
…呆れた?
いや、トイレか?
二宮なら、瞳をキラキラさせて
抱きついてくるのに。
…二宮は犬か。
ふっと頬が緩むのを感じて、
幸せを実感した。
