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方位磁石の指す方向。

第15章 scene 14



「コンビニいってくるから、
すぐ帰ってくるから。」

「…うん、」

パタン、と閉まるドア。

リビングに戻って、
シャツとパンツだけ着て、
ベッドの上で吐息を漏らした。



…よかった。

ローションとかゴムとか、
逆にあったら疑っちゃいそうだもん。


うん、そうだよね。

逆に翔さんが自分から
女の子とか掴まえないだろうし。

安心した。


「…んん、」


さっきまでのことを思い出して、
両膝を擦り合わせた。

はぁ、と熱っぽい息を吐いてから、
自身に触れた。

翔さんの大きな手を思い出すために、
きゅ、と目を閉じた。


『和也…』

あぁ。

『ここも、綺麗だから。』

あの低い声。

『好きだよ。』

あの瞳も。


「ぁ、っあ、」

段々と早くなる手の動きに合わせて、
声も上がってくる。


翔さんの声とか、息遣い。

全部鮮明に思い出せるから。


「ぁ、はぁ、」

ぎゅ、とシーツを掴んで、
どうにか声を抑えようとする。

生理的な涙が溢れてきて、
止まらなくなってしまう。


「んあっ、ぁ、」

びく、と体全体が大きく震えて、
手のひらに白濁を吐き出した。

傍らに置いてあるティッシュで
自分の手を拭いた。



…やっちゃったなぁ。

翔さん来る前に、
ひとりでしちゃったことに
罪悪感が募る。

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