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今日も明日も

第61章 見えない鎖 part Ⅳ


「だって…色んな人が俺を触った。変なもの、いっぱい掛けられた」

かずくんの弱い力が、俺の胸を押した

「お…おしりにも、いっぱい…っ」
「もういい!」

僅かに離れた体を再び抱き締める

違う
かずくんは何も考えずにやってたんじゃない

嫌で嫌で仕方ないのに
たった1人の “兄“ が喜ぶからと

…どれだけ虐待を受けていても、唯一自分が頼るしかない存在だからと

心を殺して、必死に我慢してたんだ



「とにかくかずくんは汚くなんかないし、汚れてない」

こんな時、頭が良かったらもっと何か言えたんだろうけど
生憎俺には、これしか伝えてあげられない

だからせめて少しでも分かって欲しくて、抱き締める事しか出来なくて

本当、俺って無力だなって思い知らされた

かずくんを助けたつもりでいたけど、何も助けてなんてないじゃんか

治ったのは目に見える表面的な傷と熱だけで

本当に深く傷付いてる心は、何ひとつ助けてあげられてない



だけど俺1人でかずくんを背負うにはあまりに重くて

そもそも心の傷の治し方なんか分からないのが歯痒かった





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