リモーネ
第4章 ツルバラ
「コラー!剣道部!!!」
その時、道場の入り口の方から体育教師が叫ぶ声が聞こえた。
凪は跳ねるように神崎先輩の上から退き、神崎先輩は部室の外へと飛び出した。
「すみません。一年が一人、体調を崩しまして。動けずにいたんです。もう下校時間ですね。担いで帰ります。お手数お掛けしました。」
外から神崎先輩がこのように話す声が聞こえ、その後、体育教師が心配するような発言をしたが、神崎先輩がうまくかわして体育教官室へと帰らせた。
「セナちゃん。」
部室へ戻ってきた神崎先輩は扉を閉めながら俺の名を呼んだ。
「はい。」
「…かえでは普段は明るいけど、大きな闇を抱えている。
さっきの、俺と凪とのあれに抵抗がなくて、かえでのどんな過去でも受け止められると言うのなら、かえでの恋人に、支えになってほしい。」
そこまでを噛み締めるように言うと部室の床にへたりこんでいる俺の目の前に来て目を会わせた
「俺もかえでの全ては抱き締められなかった。
でも、何となくだけど、セナちゃんならできる気がする。
…かえでは、弱い人間だ。
手に入れたものを失なうことに他人よりも多くの恐怖を抱いている。
なのに手にいれたいものには貪欲で、我慢も躊躇もしない。」
先輩はそこまで言うと、自分が帰る準備をして、ぼーっとしてる凪の服を整えて、俺に鞄を持つように促した。
「あ、でも、セナちゃんにはちょっと我慢と躊躇、してるかな。っしょっと。」
神崎先輩は床にぺたんと座りこんでいる凪を背負った。
「ごめん、せなちゃん。申し訳ないんだけど俺と凪の鞄も持ってくれる?」
「あ、え、あ、はい」
神崎先輩の行動をぼんやりと見ていた俺はここが部室で、今すぐにでも帰らなければいけない状況だということをすっかり忘れていた。
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