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プリンス×プリンセス

第73章 駆け引き

「ありがとうございます」

1年前の、あの時。

ディオチェスター様からの依頼に応えた私に、貴方がかけてくれた言葉。

それが私の使命感を煽って…

今、ここでこうしている理由でもある。

「ご期待に沿えるよう尽力致します」

そうでなければ、準備した意味がない。

自分への決意も込めて言葉を口にすれば

『ああ、分かった…頼む』

思ってもいなかった言葉。

それも、感情のこもった…柔らかな声音で語られた。

あまりにも予想外で…聞き間違えたのかと思うくらい、意外すぎて。

返す言葉に詰まっているうちに、通話は切られてしまった。

頼む、ですって。

ディオチェスター様が、私に。

頼む、だなんて…

携帯電話をしまうと、足早に皆に駆け寄った。

「支度は済みましたか?」

荷物をまとめていた従者が、パッと振り向く。

「はい、お願いします」

「さあ!急ぎましょう」

任された以上、完璧に仕上げなければ!

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