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プリンス×プリンセス

第50章 尊い人

「それは…シエンタの事ですか?」

「ああ」

肩をすくめたグレイスに、ディオはふっ…と短く笑い

「お陰で退屈しのぎになった」

おいおい。ひどい言い方じゃないか?

だけどグレイスは目を細くしたまま唇を半月状に曲げて

「それは何よりです」

…何か、さ。

ディオを理想にしてるって、こういう所なんだろうか?

かわし方って言うのか…似てるよな。

「ではお詫びがてら、一曲お相手願えますか?」

グレイスの誘いに、ディオは眉を上げる。

「詫び?」

「はい。6年ぶりに」

6年ぶり。

…って事は、ディオが留学していた頃か?

「あれから上達しましたのよ?」

「相手の足を踏むステップを、か?」

ディオの言葉に、グレイスは頬をふくらませる


「相変わらず意地悪ですね」

そんな態度は少女のようで、可愛らしい。

「確かめて頂けます?」

ディオへ手を伸ばしかけて…ちらりと俺の様子を窺った。

俺を…じゃなくて、姉上を気にしてくれてるんだ。

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