テキストサイズ

プリンス×プリンセス

第50章 尊い人

「でも、あの婚約会見を見て、考えが変わりました。あんなに優しい、温かな目をしたあの方を初めて見ました」

あ…。

グレイスが見たと言っていたのは、あの会見だったのか。

姉上の代わりに俺が出た、あの…

「貴女が変えられたのですね」

微笑みと共にそんな言葉を投げられて、どう打ち返したら良いかに迷ってしまう。

あの時のディオは、ただ単に俺をからかって遊んでいただけだ。

グレイスの言っている意味とは全く違う。

俺はゆっくり首を振ると、否定の言葉を口にした。

「そんな事は…」

「いえ。お話ししていても分かります」

グレイスはそう言って、俺からディオへと視線を向けた。

さっきとは違う女性と踊るディオをじっと見つめながら、ぼそりと呟く。

「羨ましいです」

「え…?」

羨ましい?

ディオが?

それとも…俺が…?

いや、この場合、俺じゃなくて姉上か。

それにしても…

どう話しかけるべきか頭を悩ませてしまう。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ